ちょっと前になりますが、稲垣吾郎さん主演の「半世界」を観てきました。
そして予告の映像だと、まるで無印良品店のBGMのような
ほのぼのとしたケルト風音楽が
流れているし、「牧歌的な田舎の炭焼き職人の話なのかなー?」
と呑気に構えていたら良い意味でそれは裏切られました。
・「半世界」というタイトルに込められた意味
・ネタバレにならない見どころ
・こちらを知ることはあちらを知ることだ
▶︎「半世界」というタイトルに込められた意味とは?
半世界は2019年に公開されている(現在も公開中)日本映画。
タイトルでもある『半世界』は、写真家の小石清の写真展の題名から
つけられています。第31回東京国際映画祭コンペティション部門選出、
感覚賞受賞作品(wikipediaより)です。
世界ではなく「半」というところ。
わたしたちは世界中すべてのことをニュースなどで知っているつもり、
でいますがやっぱり本当は自分を中心としたほんのわずかな世界に生きています。
だから世界すべてを生きるという人は、例えばグローバルな仕事をしている
としてもやっぱりそれは「世界」を全部生きていることではない
のではないかなとぼんやり思います。
どちらかの世界を生きることでどちらかの世界を知る、といった
フラクタルな構造になっていることをあらわしているのかなあ。
などと感じています。
主人公の炭焼き職人高村紘(稲垣吾郎さんが演じています)は
伊勢志摩の近くの市井の人です。親の後を継ぎ、ある意味地味で実直な
炭焼き職人という仕事を毎日淡々としています。家族がいて、
毎日普通に生活している。
そこに、同級生でもある沖山瑛介(長谷川博巳さん)が帰郷してくる
のです。海外派遣をされていた自衛隊だったわけですがとある理由が
あり故郷に戻ってくるのです。
ここにはもう一人、中古車販売をしている同級生の岩井光彦(渋川清彦さん)
もおり、3人が織りなす関係性や、家族、地元の人々。親子。
田舎と都会。などいろいろな視点でストーリーを感じることができます。
▶︎ネタバレないならない程度に?!見どころ。
通常だったら、海外派遣されていた自衛隊員が地元に戻ってくる、
というところが主人公になりそうなきがしませんか?
しかし、主役は「炭焼き職人」である紘なのです。
これはひとつのポイントではないでしょうか?
キラキラとした場所にいた稲垣吾郎さんが演じるとしたら通常だったら
ドラマティックな落差を感じる登場人物でもよさそうなのですが
今回の主人公、紘は、髭を生やし、木を切り炭を作る。ある意味客観的で
自分にすらそこまで興味がないという人物なのです。
ニット帽をかぶり、ある意味最初はなにも事件などおこらない。
毎日が淡々と過ぎていきます。
わたしは震災後、地元に戻っていたので、瑛介の感情が突き刺さる
(要するにちょっと理解できるということなんです)と
幾度も感じるシーンがありました。うぐっ、となりましたね。
紘、瑛介、どちらの目線で見るかで
ストーリーは異なると思います。
また、この映画は働き盛りの男性あるいは、
仕事で一線を退いた人ですらかなり引き込まれる作品で
あることは間違いなさそうです。
”さまざまな「生き方」に向けて問いかけるものが存在する”といえましょう。
実際に、三月上旬に私が見に行った日比谷のTOHOシネマズの
映画館でも満席でした。
サラリーマン風の男性や熟年カップルも多いのが印象的でした。
「新しい地図」のファンのコア層というべき女性の方はもちろん、
お客さんに男性がとても多くてなんだか妙に嬉しくなった
記憶があります。
▶︎志摩の自然が織りなす風景に癒される
ストーリーは見てからのお楽しみとして、時々引きの映像で南伊勢湾の
キラキラとした風景が心癒されます。
三重県や伊勢というのは伊勢神宮もありますし、どこか神聖な雰囲気があるなと
感じました。
▶︎「半世界」撮影ロケ地7選!をまとめてくださっているブログを発見!
こちらには半世界の撮影ロケ地が載っています。
もうすでにロケ地巡りをしている方もいらっしゃるようですが
映画を見ていない方でも自然に癒されると思いますので
ご興味ある方は、是非行かれてみるのもおすすめです。
▶︎男・39歳、三人の男の友情も見どころ
皆さんには幼馴染がいますか?そして大人になってからも連絡を取り合うような
そんな仲の友情というのはありますでしょうか?
もしずっと地元ですごして進学し卒業し、お家の仕事を継いだりする
場合はそんな仲の友人もいるかもしれません。
二人ではなく「さんにん」というのもポイントかもしれません。
二人ではない3という数字がバランスをもたらしてくれます。
あまりこのブログで書いてはいませんが、かくいう
わたくしめも39歳なのです!
この年齢が若いのかそうでないのかというのは置いておいて、
やっぱり都会の年齢とそうではない都市での年齢というのは
実感も重みも違うかもしれませんね。
私事ですが、震災後に過ごした数年というのは東京にいるよりも
+10歳は年齢に重みがあり、ある意味迷ったりしてはいられない
(大抵の人が家庭を持ったり子供さんがいたりしたような)
ある意味迷いも選択肢の幅も許されない感じがしたのです。
私は大いにとまどいました。
だから田舎(地方都市ではどこでもそうかもしれませんが)
ある意味で都会の人よりもはやく年齢を重ねなければ
ならない「良さ」と「そうでない部分」があったような記憶が
あります。(同じ仕事を続けることに迷いを持ってはいけないとか
そもそも選択肢や失敗自体もできない雰囲気っていうのは
あったかもしれないです。だから同じ年齢でもいくぶん大人に感じられる
部分っていうのがあったかもしれないです。)
もちろん迷えることは幸せであるし、人生を逆算して考えたときに
この最後の迷いが許されるようなそうでないような年齢というのが
この最後の30代という微妙な年齢なのかなという気もします。
映画のなかでも「振り返ってどうにかできる」という意味合いではない歳で
ひとりは海外から帰ってくる、一人は親の仕事を継いで働き続け
またもう一人も地元で働き結婚をせずに暮らす。
悩みはあるだろうけれどそれはそれとして毎日は進んでいくのです。
▶︎「ドラマと心の機微」はありながら毎日は続いていく
半世界という映画は結論があるとか、こうするのがいいとか
よかったよかった、とかそういう着地ではありません。
見る人がどこを主軸に置くかによって幾重にも見方は変わるし
考えさせられる内容です。社会だとか個人だとか世界だとか
いろいろなメッセージが込められています。あらゆる人に心を寄せて
何回見てもいい作品かもしれません。
また、『半世界』の本もありますので、映画の前後に
読んでみるのも新しい発見やきらめきがあるかもしれません。
【Amazon.co.jp限定】半世界 (キノブックス文庫)特製ポストカード付(数量限定)
◎今日のまとめ◎
「半世界」は人々の心深く残る映画です。
今までとは違った吾郎さんも見られます。新しい地図のファンの方はもちろん
日本映画としても間違いなく心を打たれ何か感じさせてくれることでしょう。
(ちなみにわたしは映画の途中からエンドロールに至るまでずっと号泣
していました 笑)